大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(ネ)3060号 判決

被控訴人は、桜井晴次は前項において認定した売買契約の履行として被控訴人に対し右の仮登記の抹消登記手続をなすべき義務を負担していた旨主張するので案ずるに、地上権、抵当権その他登記簿上明らかな負担の存在する不動産を、これを知って買い受けた者があった場合に、売主が買主に対し所有権移転登記手続をなすに先だって右不動産上の負担にかかる登記を抹消すべき義務を負担するか否かは、当該売買契約の約旨如何による問題であって、当然にかかる義務が存在するものであるといえないことはいうまでもない。そこで本件について見ると、晴次と被控訴人との間にその旨の明示の合意の存在したことを認めるに足りる証拠はないのみならず、却って≪証拠≫によれば、昭和五〇年四月ころ、晴次は控訴人セツ子を被告として前橋地方裁判所高崎支部に本件仮登記抹消を求めて訴を提起し(同庁昭和五〇年(ワ)第六九号)、晴次と被控訴人間の売買は右事件の係属中になされたものであることが認められ、本件仮登記の抹消の成否は右訴訟の勝敗にかかっていたというべきところ、訴訟の勝敗は晴次がこれを左右しうるものでないことはもちろんであり、かつそのことを被控訴人も熟知していたのである(この点は前出≪証拠≫により明白である。)から、この事実に照らすときは、晴次が契約上の義務として本件仮登記の抹消を被控訴人に約束した事実はなかったと推認するのが相当である。右仮登記が存在していても、晴次が被控訴人に対し本件土地につき所有権移転登記手続をなし、引渡をなすことは可能であり、被控訴人がこれらを受領しえたとすれば、売買の目的を到達しえないと一概に断定しえないことはもちろんで、右仮登記の本登記がなされ、ために被控訴人が目的物の所有権取得を控訴人セツ子に対抗しえなくなった際にはじめて被控訴人として売買の目的を到達しえなかったことに帰するが、仮登記の本登記は必ずなされるときまっているものでもなければ、被控訴人自身が仮登記権利者である控訴人セツ子との間で、訴訟あるいは訴訟外の交渉により右仮登記の抹消を自らの努力を通じて実現する可能性も残されているし、更に本件売買契約には本件(一)、(二)の土地の売買が実行できなかったときにそなえて、売主たる晴次の代替的義務を定めた条項も存在している(この点は前出≪証拠≫に明らかである。)のであって、これらの諸点に鑑みるときは、晴次と被控訴人との間に、前記仮登記抹消義務についての約定が存在しなかったとしても売買契約が全体として不合理であると解さなければならぬ理由はない。

それ故晴次に右仮登記を抹消すべき義務があったということはできず、その存在を前提とする被控訴人の請求は、その前提において既に失当といわざるをえない。

(石川 寺沢 原島)

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